絵本も学校もまずは楽しくなくっちゃ

 僕は今3つの保育園に毎月通っています。絵本とギターを抱えて子どもたちといっしょに遊ぶためです。どこも10年以上のおつきあいになるかと思うのですが、そのうちの一つ、関市にある松渓保育園では、園長先生のリクエストで、学年末に年長と年中のクラスで僕のオリジナル曲である『子どもたちよ』(杉山三四郎作詞・作曲)を毎年歌ってきました。この歌は、言うなればおじさんから子どもたちへのメッセージソングで、

 

 そんなに急いで 大人になるな

 時間を忘れて 泥にまみれて遊ぼう

 人はみんな違っていていいんだ

 がんばりすぎないで ぼちぼちいけばいい

 

といった詞になっています。

 今年も歌いました。年長さんたちは、これで僕ともお別れということもあって、過去には連鎖反応で大勢泣き出してしまうという場面もありましたが、今年の子たちはそんなことにはならず、いつも通りみんなとぎゅーっとハグをしたりしました。歌った後、「上手だったよ」とか「かっこよかったよ!」と褒めてくれる子もいたりで、嬉しいやら可愛いやらでおじさんの胸はキュンキュンでした。「小学校にも来てね。約束だよ」と指切りをさせられた子もいました。

 僕が通っている3つの保育園では、どこも僕が顔を出すと、キャーッと歓声が上がったり、「シャンシローせんせー!」と声がかかりまくったりで、こんな子たちに会うのが楽しみで仕方ありません。そして、僕が歌い始めると、みんなも大声で歌ってくれるし、合いの手を入れてくれるしで大盛り上がりになります。この3園では、普段から保育士さんが僕のCDを使って保育をしてくれているので、子どもたちの体に染み付いているんでしょうね。ありがたい話です。

 「さんしろう絵本ライブ」をご覧になったことがある方は、保育園で僕がやっていることを想像していただけるとは思うのですが、ちょっとご紹介しておきます。

 30年近く前から、僕は、歌いたくなるような絵本の文章に曲をつけて歌って「絵本ライブ」と呼んで公演をしてきました。初めはこんなのが受けるかどうか心配でしたが、だんだん子どもや親たちが喜んでくれてるという実感が出てきて、調子に乗ってレパートリーを増やしてきました。そして、2004年10月にCDデビューをしました。2023年10月に5枚目のアルバムを出しましたが、今はこれの収録曲を中心に絵本ライブをしています。保育園では歌だけでなく、物語絵本の読み聞かせもするし、体を使って遊ぶ絵本、言葉遊びの絵本、そして参加型のインタラクティブ絵本なども組み合わせて30分程度を子どもたちと一緒に遊んできます。いや、遊んでもらっていると言った方がいいかも知れませんが。

 『母の友』(福音館書店刊)の最終号を読んでいたら、絵本作家の五味太郎さんが、「昔々、ある小学校で自作の絵本で授業をして盛り上がったけど、その後、職員研究会で内容のなさやテーマのなさが批判され、始末書まで書かされた」といった話がありました。学校というところは「楽しい」という価値観がないんでしょうかね。僕にとって、絵本は(音楽も)みんなと繋がれるとってもありがたいツールですが、意味やテーマがなくてはいけないとは…。勉強も本来は「楽しい」ものであるはずなのに、なぜ? 学校がもっと楽しい場所になるにはどうしたらいいんでしょうね。

おおきな木 杉山三四郎