谷川俊太郎さんが亡くなられました。92歳でした。谷川さんの詩や絵本には、日本語の面白さ、言葉と体、命と平和など、多くのことを教えてもらいました。
と言っても、直接お会いしてお話させていただいたことは一度しかありません。2011年7月に発刊した『杉山三四郎絵本をうたう第3集「子どもたちよ」』に『おならうた』(谷川俊太郎 作、飯野和好 絵/絵本館)を収録するにあたって、谷川さんが大垣市に公演に来られた際、楽屋を訪ねて収録の許可をお願いをしに行きました。その時、他にも谷川さんの詩ではいろいろと遊ばせていただいております、という話もしたところ、「僕の詩は全国各地でいろんな形で使われているので、どうぞご自由にお使いください」とおっしゃっていただきました。そしてCDは完成し、おかげで格調高い『おならうた』の歌ができました。いろんな局面でのいろんなオナラの音を集めた絵本ですが、飯野さんの絵がこれまた愉快で、艶かしく、古めかしく、濃厚です。
我が家では、子どもたちが小さかった頃に、『ことばあそびうた』(瀬川康男 絵/福音館書店)をよく読んでました。しつこいくらいに韻を踏ませた詩ばかりで、声に出して読んでみると、心も体も踊りたくなります。中でも『かっぱ』という詩が大ウケで、風呂上がりの子どもたちに、「かっぱかっぱらった かっぱらっぱかっぱらった とってちってた〜」と歌うように読んでやると、二人はすっぽんぽんで踊ったりしてました。
その後、当店主催の「生き生きと絵本を読む絵本講座」でもテキストとして使わせてもらってました。この講座でも『かっぱ』が大ウケで、いろんなリズムで読んだり、踊ってみたり、いろんな気持ちで読んでみたりという「ことばの実験」として使ってました。とくに意味のない詩ですが、嬉しい気持ち、悲しい気持ち、怒った気持ちなどになりきって読んでみると、表現する楽しさを感じてもうことができます。
『もこ もこもこ』(元永定正 絵/文研出版)というロングセラー絵本がありますが、これもすごいです。保育園などに行ってこの絵本を読んで気づいたのですが、「ぱく」とか「もぐもぐ」といった言葉を読んでいると、聞いている子どもたちの口も「もぐもぐ」動いてるんですね。擬態語と抽象画がぴったりマッチしていて自然に体が動いてしまうわけです。それ以降、僕はこの絵本を読むときには自分の体も使って表現し、子どもたちと一緒に遊んでいます。言葉と体は切っても切れない関係にあるということなんですね。
こんなふうに、谷川さんの詩の絵本は、声に出して読んだ時に、日本語って面白いなあと思えてくるものがたくさんありますが、命や平和について書かれた詩を元にした絵本も数多くあります。『生きる』(岡本よしろう 絵/福音館書店)では、平明な言葉で書かれているのですが、日常を自由にあるがままに生きられることの大切さが伝わってきます。
そして、『へいわとせんそう』(Noritake 絵/ブロンズ新社)はぜひ読んでいただきたい絵本です。左のページにはあたりまえの日常の姿が描かれ、右のページには「あたりまえ」でなくなった戦争の姿が対比されて描かれています。谷川さんは、「戦争が終わって平和になるんじゃない。平和な毎日に戦争が侵入してくるんだ」とおっしゃっていますが、こんな短い文で戦争の惨たらしさを表現している絵本はそんなにないかもしれません。
おおきな木 杉山三四郎