ユングフラウ地方、高山植物を愛でる旅

 6月から7月にかけて、5泊8日でスイスに行ってきました。『スイス鉄道ものがたり』(宮脇俊三 文、黒岩保美 絵/福音館書店/1992年初版、現在絶版)という絵本に触発されて、よし、この鉄道の旅をするぞーと意気揚々と出かけたのが5年前。スイスアルプスの雄大な自然に圧倒されて帰ってきました。来年も行きた〜い、冬にも行きた〜いと思っていたのですが、コロナ禍に突入。4年間は、やむなく大人しくしていました。

 そして、今回はいろいろ巡るのではなく、ユングフラウ地方のヴェンゲン(標高1274m)という村に4泊して、そこを拠点にして大自然の中を歩き回りました。

 ヴェンゲンからは、断崖がそそり立つメンリッヒェンという山に向けて、標高差約1000mを5分で登るロープウェイがあり、そこから頂上(2342m)までは歩いて20分ほど。ここが天空の楽園なのです。南を見れば、アイガー(3970m)、メンヒ(4107m)、ユングフラウ(4158m)のオーバーラント三山が巨大な屏風のようにそびえ、西には、眼下にヴェンゲンの村、その向こうにはラウターブルンネン(795m)のU字谷があり、落差が300mほどもある滝がいくつも見えます。そして、東には、この地方の観光地としては一番人気のグリンデルワルト(1034m)の村々が広がり、それを囲む山々も氷河や残雪に彩られた2000〜3000m級です。

 今回の一番の目的は高山植物を愛でることでしたが、冬はスキー場になるこのあたり一帯は牧草地で、どこを歩いてもお花畑。春から夏にかけて咲く、リンドウ、キンポウゲ、ワスレナグサ、クロッカス、オキナグサ、リュウキンカなどが咲き誇り、日本では見かけない花もいくつかあります。のどかな風景の中、牛たちのカウベルの音が聞こえてきて、これがまたじつに「スイス」です。今回、写真を700枚ほど撮ってきました。もしよろしければ、花や風景の写真の一部を当店HPの「さんしろうブログ」でご覧いただければと思います。

 さて、スイスという国は皆さんご存知のように観光立国で、僕たちが訪れたときも世界各国からの観光客でいっぱい。地元のドイツ語や英語だけでなく、いろんな言葉が聞こえてきます。英語は大体どこでも使えて、困ったときも片言の英語で何とかなります。今回泊まったホテルの女将さんはとてもフレンドリーで、日本語交じりの英語でいろいろ話しかけてくれました。

 そして、鉄道がすごい。こんな山奥に行く登山鉄道も大体30分に1本はあって、乗り換えの接続がどこも絶妙です。時間も正確。さすがは時計の国です。車体のデザインがどれもセンスが良くて、絶景にも溶け込んでいます。また、観光客が使いやすいように、スーツケースなどの大型荷物や自転車を置くスペースもあるし、犬も乗ってきます。犬もよく躾けられているなあと感じました。そして、何よりすごいと感じるのは、揺れないということ。レールの上を滑るように走ります。

 今回、ヴェンゲンは2度目の滞在だったので、大体の地理感覚は頭に入っているので、その日のお天気に合わせて、鉄道、バス、ロープウエイ、ケーブルカーなどを利用してユングフラウ地方をいろいろ歩き回り、同じところに2度3度行ったりもしました。そして、鉄道だけでなく、ハイキングコースやバイクコースが整備されているところもスイスの魅力です。今回歩いたところを全部紹介するような紙面はありませんが、どこを歩いても風景は雄大だし、お花畑は見事でした。

 また、いつかヴェンゲンに帰りたいと思います。

おおきな木 杉山三四郎