5月5日はおおきな木の誕生日。今年30歳になります。30年もやってきたという実感はほとんどないのですが、今度の30周年記念パーティに向けてそのヒストリーを整理していて、つくづく、「いろんなことやってきたよなあ」とため息をついています。
「ことば塾」と「野外塾」はずーっと続けていますが、他にも、造形教室、絵画教室、バイオリン教室、英語教室なんかもやってました。絵本原画展も月替わりに開催し、絵本作家の講演会も年に何度も開いてました。人形劇やおはなし会なども毎月やってたし、保育士さんなどを対象にしたセミナーもやってました。
また、あのころ、今では知る人も少なくなってしまった「トラや帽子店」という保育業界では抜群の人気を誇ったバンドがあり、そのコンサートも3回開催しました。会場は1600人のホール。チケット発売日には早朝から店の前に行列ができて、近所の方からいったい何ごとかと訝られるような状態で、なんとチケットはほぼ即日完売でした。今から思うと夢のような話です。その直後、トラや帽子店は解散となり、3人のメンバーはそれぞれ別の道を歩んで活躍されていますが、あのバンド時代は夢のようです。あのようなチケット売上はないものの、その後結成されたケロポンズなどのコンサートやセミナーも何度かやりました。
とても今では考えられないほどイベントを頻繁にやってましたが、こうしたイベントを企画して一番大変なのは人を集めることです。これがいつごろからかだんだんと難しくなってきました。どうしてでしょうね。
ことば塾と野外塾、そしてこうしたイベントを開催するにあたり、開店当時から僕たちが考えていたコンセプトは、「親子で感動を共にする時間を作る」ということでした。絵本を読む時間というのはまさにそんな時間ですよね。親子で絵本を開いて、笑ったり驚いたりした時間はかけがえのない記憶として子どもの心に残っていきます。「うちの子は本が嫌い」とおっしゃる方がありますが、たぶんそんな時間を持てなかった方じゃないでしょうか。「うちの子は虫が嫌いで」とおっしゃる方もありますが、やはり親子での自然体験がないのでは、と思ってしまいます。当店主催の野外塾では親子で参加される方も多いですが、共に自然体験をする時間、これも本当に貴重だと思います。
『こどもを野に放て!』(春山慶彦 編/集英社)という本を読んでいたら、なぜ少子化対策で子どもは増えないのか、というくだりがありました。子どもが減ると将来労働力が減る、だから産め産めと金をばら撒いている。でも、本来子どもが欲しいという気持ちはそんなお国の都合ではなくて、赤ちゃんは可愛いから欲しい、産みたい、育てたいという、動物的な本能であることを忘れてはいけない、ということですね。
子育てをとっくの昔に終えた人間だから言うのかも知れませんが、子どもはあっという間に大きくなってしまいます。家族みんなで子育てを楽しむ時間なんて決して長くないんです。30〜40代になってしまった我が子たちですが、当時のことは親にとっても忘れられないことばかり。可愛くて、面白くて、楽しい思い出です。
女性の社会進出も進み、昔に比べてお母さんたちもとても忙しくなっているように思います。親子向けイベントに人が集まらなくなってきているのはうちだけの話ではないようです。お金を稼ぐことよりも大切なことがあります。皆さん、子育てをもっと楽しみませんか。
おおきな木 杉山三四郎