沖縄やんばる、固有種たちと出会う旅

 毎年、「美しい海(ちゅらうみ)」を求めて、沖縄の離島に渡り、海で泳いだりホエールウオッチングをしたりしてきましたが、今回は山にも行ってみようと、生まれて初めて「やんばる」に足を踏み入れ、山歩きを楽しんできました。2月の沖縄もおそらく初めてかも。

 那覇空港でレンタカーを借りて高速道路で名護へ。人気店で沖縄そばを食べてからやんばるに入ります。あちこちで桜が咲いています。沖縄でも最初に咲くというヒカンザクラ(カンヒザクラ)です。

 まず本島の最北端に行ってみようということで、訪れたのが大石林山(だいせきりんざん)。石灰岩が何百万年もの間に侵食されてできたゴツゴツの岩々が独特の風景を生み出しています。遊歩道を歩いていくと、ソテツの群落やガジュマルの林があり、クワズイモやオオタニワタリなど、巨大な天然の観葉植物に覆われています。展望台まで登ると、最北端の辺戸岬が眼下に見下ろされ、海を隔てて鹿児島県の与論島がよく見えました。2月というのに蝶もたくさん飛んでいて、トベラの花にはジャコウアゲハが群れていました。

 辺戸岬からは島の東側の県道を走ってホテルに向かいます。やんばるでは行き交う車も少なく、海と山とパイナップル畑が広がっています。そして、ホテルで車を降りると、キョキョキョキョーという鳥の声が聞こえます。ひょっとしてヤンバルクイナではないかとスタッフの方に尋ねるとやはりそうで、ホテルの庭にも姿を現すことがあるとのこと。その晩、ラッキーなことに至近距離で見ることができました。

 ヤンバルクイナは1981年に新種として登録されたとのことですが、こんなに大きくてよく鳴く鳥で、しかもあまり警戒心がなくて人里にも現れる鳥が、なんでそれまで発見されていなかったのかというのが不思議です。おそらく地元の人たちには昔から愛されていた身近な鳥だったんでしょうが、研究者の目には止まっていなかったということなんでしょう。でも、やんばるにしか生息しない天然記念物であることには変わりなく、初やんばるでこの子に会えたのはラッキーだったと思います。このクイナくん、翼がなくほとんど飛べないのに、夜は樹上で過ごすのだそうで、一体どうやって木に登るのかぜひ一度目にしてみたいものです。

 このホテルでは、他にもノグチゲラという固有種のキツツキも見られるとのことでしたが、これはタッチの差で見ることができませんでした。でも、沖縄ならではのイモ虫に遭遇。日本最大の蝶といわれるオオゴマダラの幼虫です。ホテルの庭に食草であるホウライカガミが植栽されており、そこに数頭群れていました。黒地に薄黄色の縞模様、さらに赤い点々があるド派手な幼虫です。蛹は黄金色に輝き、まるで宝石のようです。

 やんばるの2日目は、慶佐次湾のヒルギ林のマングローブカヌーツアーに参加。地元のガイドの方にやんばるの文化や植物などについていろんな話を聞きました。そして、午後は本島最大の滝といわれる落差25.7mの比地大滝を見に、往復2時間ほどのハイキングを楽しみましたが、ここでも固有種の鳥に会えました。頭から背中がオレンジ色で顔から胸にかけてが黒いホントウアカヒゲです。確かに黒い髭を生やしているようないでたちですが、可愛い小鳥です。この子も至近距離まで来てくれて、バッチリ写真に収めることもできました。

 次にまたやんばるを訪れる機会があれば、時季を変えてぜひヤンバルテナガコガネに会いたいものです。

おおきな木 杉山三四郎