おおきな木は今年30周年を迎えます

 新しい年を迎えました。今年の5月5日には、おおきな木は満30歳になります。あれから30年も経ったという実感はあまりありませんが、古くなった床やオーニングなどを見ると、それなりの時を感じざるを得ませんし、何より自分の顔が、開店当時の写真と見比べると、その「経年劣化」にため息が出てしまいます。

 先日、あるパーティーに出席したら、「三四郎さんにお会いできてとっても嬉しいです。昔、野外塾でお世話になってました」と声をかけていただいた女性がありました。お名前を伺ったら、その野外塾に参加していたお嬢さんのことは覚えていました。あれから25年ほどが経ち、現在33歳だとのこと。店や絵本ライブに来られる方でも、「昔、野外塾やってました。無人島にも行きました」とか「ことば塾に来てました」という方にちょいちょい出会います。30年というと世代一回りですよね。開店当時お子さんを連れて来られたという方が、今度はお孫さんを連れて来られます。最近そういう方が本当に多くて、嬉しい限りです。

 最近、新聞やテレビ、子育て関連サイトなどに取材していただくことがありますが、「30年前と今では変わったことってありますか?」とよく聞かれます。子どもも変わったのでは、と感じておられる方もありますが、僕は、本質的には変わってはいないと思います。少なくとも、今、野外塾やことば塾に来ている子たちや絵本ライブで出会う子どもたちが、自然に触れたり、絵本に触れたりして見せる姿は何年経っても同じです。

 しかし、開店当時ほとんど予測できていなかったことがこの間いろいろありました。30年前には、国民一人ひとりが通信機器を持ち歩くなんてことは考えられませんでした。インターネットが登場した頃は一体何のこっちゃ!?でした。それが、あれよあれよという間に当たり前になって、スマートフォンやタブレットを子どもたちも使いこなす時代になりました。IDとパスワードがあればどこにいても買い物ができるし、本や雑誌を読まなくてもいろんな知識や情報を得ることもできます。インターネットが出現してから、町の本屋はどんどん姿を消していきました。そして、長年愛読されてきた雑誌もどんどん姿を消しつつあります。

 便利にはなったものの、それを悪用して人を騙す輩もどんどん増えているのには頭に来ます。自分もまんまと騙された経験がありますが、その巧妙な手口には呆れるばかりです。自分は生来ずっと性善説に基づいて人付き合いをしてきたつもりですが、最近はそれでは危うくなってしまいましたね。いい話はまず疑ってかからなくては、です。嫌な世の中になってしまいました。

 ということで、子どもの本質は変わらなくても、周りの環境はずいぶん変わりました。でも、いいこともあります。それは男性の子育て参加が増えたこと。開店当時は父子で来店する方は多くありませんでしたが、最近ではごく普通になって、おんぶや抱っこはお父さんの役目だったりもします。野外塾も父子参加が増えました。昔はお父さんが参加されても居場所がないということもありましたが、今ではお父さん同士も子どもの話題で繋がれるので、ちゃんと居場所があります。それどころか、子どもと付き合うことで自分の子ども時代が蘇り、子ども以上に活動に興じておられる方も少なくありません。大人にも子どもの魂は宿っています。世の中いろいろ変わっても、子どもの魂を支えていけるような仕事を今しばらく続けていきたいと思っています。

おおきな木 杉山三四郎