中日新聞の毎週月曜日に連載されている「中日こども文庫」の執筆を3年間(2か月に一度)続けてきましたが、先月が最後となりました。「いつも楽しみに読んでましたが、終わりなんですね」と、いろんな方々から惜しむ声をいただきました。多くの方にご愛読いただいていたことが分かり、とても嬉しいです。いつかはマウンドを降りるときが来るわけですが、自らの意思ではないので、少し心残りもあります。でも、その続きはこの欄で折に触れて書いていくことにします。
さて、今年のこどもの日には、絵本作家であり、紙芝居作家でもある長野ヒデ子さんがやってきます。今までにも何度かおおきな木に来ていただいたり、ぎふメディアコスモスのイベントにも出演していただいたりしていますが、今回は紙芝居の魅力を伝えてもらって、親子で自分の紙芝居を作る「長野ヒデ子さんとかみしばいをつくろう!」というプログラムです。
長野さんにお会いするのは、おおきな木25周年記念イベントのとき以来になりますが、長野さんからはしょっちゅうLINEでお知らせをいただいているので、なんかいつもお会いしているような感じです。何かいいことがあると誰かに伝えたくて仕方ないんでしょうね。でも、そのLINEが変換ミスやら無変換だらけで結構難解で、これを解読するのが僕の楽しみでもあります。たぶん、細かいことは気にせずに、まず嬉しさを伝えたいという気持ちがいっぱいなんでしょうね。
昨日、長野さんの最新エッセイ集『絵本のまにまに』(石風社)が届きました。その冒頭、「先日インタビューを受けた雑誌で、私のことを『波の間に間に生きている人』と書かれていて驚いた」とありましたが、なるほどとうなずいてしまいました。波に逆らうことなくボーっと漂いながらも、自分の感性はちゃんと研ぎ澄まして自由に生きてきた方だと思います。
「本には、その中身から自分の内面を育てる役割と、人と人とをつなぐ力がある」とも書かれています。ちょっと狭い捉え方になってしまうかもしれませんが、僕は絵本でそれを実感しています。そして、「子どもは生まれながらにして生きる力を持っており、子どもから教えられることは多い」とも。これも同感です。長野さんの絵本『せとうちたいこさん』(童心社)のシリーズや、わらべうたや遊び歌の絵本や紙芝居などを見ていると、子どものような「生きる力」を持っておられるからこそ生まれるストーリーなんだろうと思います。
「ボーっとしている私はよく落し物をする」という話では、散歩の途中に身につけていたものを落としもするけど、拾い物もするそうです。スズキコージさんとの共作となる絵本『トコトコさんぽ』(鈴木出版)は、くまさんが次から次といろんなものを拾って身につけていく、昔話によくある積み重ね話です。僕は曲をつけて歌っていて、「あららららー!」と子どもたちとの掛け合いを楽しんでいます。しかし、この絵本は今品切れになっているので、同じ黄金コンビの『もりもりくまさん』を絵本ライブの定番にしています。こちらは、もりもりよく食べ、もりもり力持ちで、よく働いて、料理も得意というくまさん。この絵本も、「わお、わお、わおー!」と、子どもたちといっしょに吠えてますが、楽しい気分に満ち溢れていて、元気が出る絵本です。きっと長野さんの気分そのままなんだと思います。
ボーっと感に溢れる長野さん。ほかほかとあったかい「鯛焼きのような女性」だと僕は感じています。
おおきな木 杉山三四郎