日本では、会員の方に定期的に本をお届けするというシステムをいつのころからか「ブッククラブ」という名称で呼ぶようになっていますが、そもそもブッククラブとは何のことなのかとちょっと調べてみました。発祥はドイツらしいんですが、広まったのはアメリカで、書籍を市価より安く通信販売する会員組織のことで、仲間内の読書会などもブッククラブと呼ぶこともあるそうです。日本では書籍の割引販売はご法度ですからどこも定価販売ですが、おもに児童書専門店がこの定期配本サービスを行っています。当店も開店当初から「おおきな木ブッククラブ」を続けてきました。現在会員の数は250名。他社に比べるとかなり少ないと思いますが、当店の規模から考えたらちょうどいいぐらいかもしれません。1年ぐらいで退会される方もありますが、中には、赤ちゃんのときに始めて、6年生になるまで続けてこられた方もあったりして嬉しいかぎりです。
ほそぼそと続けてきた当店のブッククラブですが、昨年の春ごろから会員の方が少しずつ増えてきました。理由ははっきりしませんが、新型コロナ騒動でおうち時間が増えたとか、図書館が閉まっていたりといったことも関係しているのかもしれません。
今さらの話ですが、ブッククラブという検索ワードでネットを調べていたら、各社のブッククラブの比較サイトというのを発見しました。クリックしてみると、そこに取り上げられている10社の中に、なんと「おおきな木」もあるではありませんか。何年か前にアップされたサイトのようで、データ的にはちょっと古いんですが、何か悪いことでも書かれていると困るなと思い、その評価を見てみました。すると、「絵本選びがとても個性的」と書かれています。他社のブッククラブには選ばれていない絵本がたくさん入っていて、「とてもユニーク」だそうです。ユニークなものを選ぼうと意識したことはありませんが、たまたま私たちが気に入っている絵本を選んだ結果がユニークだったようです。
ちょっと気になって他社の選書も見てみました。各社違いがありますが、ロングセラーを重視してるところは結構ありますね。なぜロングセラーかというと、長い年月、多くの人たちに支持されてきたからということなんですね。でも、それって巷の評価で選んでいるということですから、専門店の存在価値はどうなのって思ってしまいます。ですから、おおきな木のリストにもロングセラーはたくさんありますが、「ロングセラーだからいい絵本だ」といった考えは持っていません。そのロングセラーだって新刊のときはあったわけだし、今、次から次に出版される新刊にも素晴らしい(面白い、楽しい、etc.)作品は常にあって、それを会員の方にも出会っていただきたいという思いがあります。ひょっとしたらこれからロングセラーになる可能性も秘めているわけですしね。ですから、当店のリストには比較的新しい絵本や童話も含まれています。
ちなみに当店の選書の基準を書いておきますと、①大人の価値観ではなく子どもの感性に響く本、②作者や出版社が偏らないこと、③日本だけでなく海外の作品も選ぶ、④配本月の季節にふさわしいもの、といった感じですが、さらに、⑤皆さんがあまり持ってなさそうなものを選んでいるということがあり、それでちょっとユニークになるのかもしれません。ま、ユニークであろうとなかろうと、本で親子のいい時間を作ってもらえたら、それが絵本屋の喜びなのです。
おおきな木 杉山三四郎