「ナージャの5つのがっこう」から思うこと

 今回は『ナージャの5つのがっこう』(K.ナージャ  文、市原 淳 絵/大日本図書)という絵本をご紹介します。著者のキリーロバ・ナージャさんは、旧ソ連のレニングラードに生まれて、ロシアの小学校に通っていたのですが、科学者の両親の転勤で、小学校3年生の時にイギリスの小学校へ転校したのを皮切りに、その後、フランス、アメリカの小学校を転々とし、4年生の時に日本の小学校に転校してきます。その5か国で実際に通った地元の学校の違いを紹介しているのがこの絵本です。

 まず、教室の座席のレイアウトの違い。日本では、黒板とその前に立つ先生に向かって座るのが一般的ですが、イギリスでは大きめのテーブルが並んでいて、5〜6人が囲みます。グループで勉強を教え合うというスタイルですね。フランスでは、みんなの机がひとつの輪になって並んでいます。みんなの顔がよく見えて、先生はその輪の中に入って子どもたちに語りかけるという形です。まるで国連の会議のようですね。アメリカはさらにすごくて、この輪の中にカーペットが敷かれ、その上にソファもいくつかあって、そこで読み聞かせをしたり、ディベートをしたりするそうです。授業中はおしゃべりは禁止で、先生の言うことにしっかり耳を傾けるという日本の教室とは違って、子どもたちが自由に意見を言い合うことが重視されているんですね。先生はファシリテーターとしての役目を担っています。

 ランチの取り方もみんなずいぶん違います。日本では、ランチルームがある学校もありますが、大抵のところでは教室で全員が同じ給食を食べます。ロシアでもほぼ同じなんですが、朝食も給食なんだとか。この絵本には書かれていませんが、イギリスやアメリカは給食を食べてもいいし、家からランチを持ってきてもOKで、給食のメニューを見て決めたりする子もいるんだとか。そして、フランスでは、長い昼休みがあって家に帰って家族と一緒に食べる子が多いんだとか。

 お国によって学校のシステムは大きく違うんですが、ナージャが一番びっくりしたのは日本の学校です。みんな、同じかばんに同じ帽子、名札、上履き、防災頭巾。プールではみんな同じスクール水着に帽子、教科ごとにノートがあるのもヘン。不思議なことだらけです。

 この欧米と日本の学校の違いを一言で言えば、多様性を認めるか認めないかの違いではないかと思います。現在は日本の電通でコピーライターとして活躍されているナージャさんですが、彼女のブログにはこんなことも書かれています。日本の学校の初日にあった数学のテストで、全問正解だったのに、数字の書き方が違っているので不正解だと言われたというんです。アラビア数字やアルファベットの書き方は国によってまちまち。なのに、日本ではひとつしかないと言われたとか。

 欧米の国々では、人種、宗教、思想、貧富の差などが多様化しており、それを前提として学校教育がなされていますが、日本も様々な面で多様化しています。でも、島国根性というのか、異質なものを認めていくことにはまだまだ抵抗感があるように思います。画一的なスタンダードがあることによって、それに馴染めない子は不登校になっているのが現状です。

 この春、岐阜市立草潤中学という、多様化を認めることをコンセプトとする不登校特例校ができます。制服も校則も校歌も給食もない、授業の受け方や先生は生徒が自分で選べるという画期的なことが書かれていますが、これからどんな展開を見せるのか楽しみです。

おおきな木 杉山三四郎