子どももハマるタケノコ狩り

 4月後半から5月にかけての時期、僕は毎年落ち着かない日々を過ごします。何でかというと、山菜の季節だからです。「もう芽は出たかなあ?」「いや、まだ早すぎるかも?」。その年の天候である程度予想はできるものの、現地に行ってみないと分かりません。火曜日しか休めない僕の場合、タイミングを間違えると大ショック。1週間違うだけで野山の状況は全然変わってしまいますからね。岐阜市内でも、人気のコシアブラやタラの芽、セリやミツバなどは採れますが、やはりいいものをゲットしようとしたら時間をかけて雪深い山奥に行かなくてはいけません。なので、気が気でないわけです。で、今年はどうだったかというと、毎週ほぼほぼ当たり。例年通り、荘川、板取、揖斐、根尾あたりで、渓流釣りをしながら山菜を愛でて参りました。

 そもそも僕が山菜に出会うことになったのは20代の頃。赴任していた長野県の一番北の方の信濃町という雪国です。アパートなどひとつもないところだったので、地元の小学校の教師をしてらっしゃる方のお宅に間借りをしていました。そのご夫妻が春は山菜狩り、秋はキノコ狩りと山の幸に大変詳しい方で、いっしょにタケノコ狩りに連れて行っていただいたのが初体験でした。このとき僕は、タケノコというのは掘るものだと思っていたのですが、連れて行かれたのは戸隠あたりの笹薮。竹なんてないのに…??でした。そうなんです。このあたりでタケノコというと、根曲がり竹のことで、太めの熊笹といった感じです。土から顔を出したこの根曲がり竹のタケノコを手でポキっと折って収穫します。

 これが楽しかったのなんの。夢中になって藪をくぐってタケノコ探しをしていると、自分の居場所が分からなくなって、「おじさーん、おばさーん!」と大声で叫んでいたら、「どうしたの? ここにいるがね」とおばさんが笑ってました。すぐ近くにいたんですね。

 信州から新潟県の妙高あたりではこのタケノコを信州味噌でタケノコ汁にしますが、これがまた美味しいんです。タケノコの他に、じゃがいもと卵、それに鮭缶を入れるんです。鮭缶は高いから鯖缶でもいいよと教えてもらいましたが、どうやら鯖缶の方が正統派のようです。

 さて、先日、おおきな木野外塾では、「雪国の春キャンプ」を行いました。このキャンプ場は根曲がり竹の藪に囲まれていて、ちょっと入って行くだけでタケノコがニョキニョキ生えています。昨年も同時期に行ってるんですが、伸びすぎていてあまり収穫できませんでしたが、今年はタイミングばっちり。「山菜は何でも太い方が美味しいんだよ」と子どもたちに言い聞かせてから藪に放つと、みんな目を輝かせて太いタケノコ探しに夢中になりました。「ほら、そこに太いのがある!」「えっ、どこどこ?」。険しい藪の中まで採りに行ってくれるので、「ここ掘れ、ワンワン」状態。

 ここでは、タケノコの他に、ワラビもニョキニョキ生えていて、これにも子どもたちがハマりました。そして、僕は密かに、タラの芽やハリギリ、コゴミゼンマイ、コシアブラ、クレソンなども採りました。

 というわけで、山菜いろいろ大収穫。みんなでタケノコの皮むきをして信州流タケノコ汁にしたり、皮付きのまま焼きタケノコにしていただきました。ワラビはアク抜きをして翌朝おひたしにしましたが、子どもたちも結構食べてました。お昼は、山菜天ぷらうどんとクレソンのピザ。現地調達の食材でいろんなお料理ができる。これって最高のキャンプだと思いませんか?

おおきな木 杉山三四郎