前にもこの欄でネタにさせてもらった二人の男子のことをまた書かせていただきます。彼らは今、大学一年生。小学生の時からおおきな木野外塾に来ていた子です。高校生のとき、Yフレンドという名称の子どもたちのリーダー的存在で活躍し、今年の春、I君は新潟大学農学部、N君は琉球大学理学部に進学し、岐阜を離れました。
二人の共通点は生き物好きの飼育マニア。フェイスブックをやっているI君はときどき彼のペットを動画で紹介してくれます。ペットといっても、トビイロケアリの女王アリとかワラジムシとかカエルとかニホンカナヘビで、先日の学祭では、所属サークルの展示で、可愛がっている2匹のナガレヒキガエルを出演させて、達成感を十二分に味わうことができたと書いていました。
僕が大学生の時は、学祭というと、所属していたフォークソング同好会のコンサートに出演して女の子たちの気を惹いていい気になっていましたが、I君の学生生活にはそんなやましい心は一切ないようです。
一方、琉球大学に行ったN君はというと、あまり情報がないので何をやってるのかよく分からないのですが、夏に沖縄で会ったときには、夜の海にしょっちゅう潜っているようで、いっしょにシュノーケリングをしたときには、「この岩の下にネッタイミノカサゴとキミオコゼがいるよ」などと魚の名前をいろいろ教えてくれたりしました。そして先日、彼からLINEで届いた写真は血まみれになったカメの写真。説明がなかったので、「何これ?」って聞いたら、「ぽん」という答え。ははあ、スッポンの解体をしていたわけですね。彼は高校生のときから、ウナギやヘビをさばいて食べたりしてましたから、こんなのはさほど驚くことではありません。
こんな二人ですが、一般的にはやはりちょっと変わっているわけで、中学や高校では浮いた存在だったようです。でも、野外塾では年下の子たちの憧れの的で、N君などは学校ではほとんどしゃべらないちょっと変なやつなのに、野外塾では子どもたちともよくしゃべってテキパキと動くやつなのです。
学校というところは、みんな一斉に同じことをやらせて競わせるという仕組みになってますから、彼らのような生徒はそんな仕組みには馴染めないのは当然でしょうね。でも、「みんな違ってみんないい」を実践している野外塾では、みんなそれぞれやりたいことを自由にやってます。でも、ただ放ってあるというわけじゃないですよ。子どもたちが自然の中で遊べそうなことをあれやこれやと用意していきますからね。それをおもしろいと思える子はやるし、そうでない子は他のことをしている。退屈してる子がいなければいいと思ってます。そんな環境が彼らの肌には合っていたんでしょうね。
そして、大学に進学したら全国から生き物好きが集まってきているので、そこでは彼らは全然フツーなわけです。彼らに言わせると、尊敬するスゴイ先輩がいろいろといるようです。おそらく授業もサークルも楽しいんだろうなと推測します。自分の好きなことがちゃんとあって、その道に進めている彼らは幸せもんです。偏差値教育に振り回されて、よりレベルの高い学校に進学することが目標になっている子たちとはちょっと違います。
今年の夏、里帰りしてきた彼らも野外塾のキャンプに参加してくれましたが、相変わらずの人気者ぶりを発揮していました。野外塾では、彼らを見て育ってきた中学生たちも徐々に個性を発揮し始めて「おもろい連中」になってきているので、これからが楽しみです。
おおきな木 杉山三四郎