韓国の人気絵本作家ペク・ヒナさんのこと

 先日、児童書の出版社ブロンズ新社の新刊説明会があり、京都まで行って参りました。ただの新刊説明会ならわざわざ京都まで行かないんですが、今回はスペシャルゲストに、韓国の人気絵本作家であるペク・ヒナさんと、その翻訳者である長谷川義史さんが来られるということで、ワクワクしながら行って参りました。

 長谷川義史さんは大人気絵本作家ですので、絵本ファンにはおなじみですが、ペク・ヒナさんのことはあまりご存じないと思いますので、まずはご紹介を。

 代表作はやはり『天女銭湯』(2016年8月発行)でしょうか。昔ながらの古〜い銭湯にお母さんといっしょに行った女の子ドッチが、水風呂で天女に出会うという話です。天女というと妖艶な美女を想像するんですが、この天女は贅肉たっぷりのおばあさんで、すごい貫禄なんです。その天女がドッチに水風呂遊びをいろいろ教えてくれて仲良くなるというお話ですが、ストーリーも奇抜なら絵も奇抜。キャラクターは全部粘土で作られた人形で、それをシーンに合わせた背景に配置して写真を撮るという手法なんですね。この絵本は、実際に銭湯を借り切って撮影されたそうです。

 続いて出たのが『天女かあさん』(2017年8月発行)。こちらの天女は愛嬌たっぷりのおかめ顔のお母さん、というよりおばちゃん。熱を出して早引きして来た息子の世話を誰かに頼もうとお母さんがあちこち電話をかけていたら、この天女につながってしまった、というところから驚きのストーリーが始まります。

 こんな奇想天外な絵本を作られるペク・ヒナさんはどんな方かというと、これらの天女とはまるで違って、二児の母でもある美しい女性でした。そのペク・ヒナさんの新刊が『あめだま』(2018年8月発行)。この絵本には天女は登場しません。主人公は友だちがいない一人ぼっちの男の子。不思議なあめ玉を手に入れてひとつずつなめてみると、ソファの声が聞こえて来たり、犬の言葉がわかったりして、次第に外の世界に心を開いていくようになるという物語です。

 ペクさんがまず韓国語で、その後長谷川さんが日本語で読み語り。そして、制作過程をスライドショーで丁寧に紹介してもらいました。ラフを描いて、人形を作って、背景を描いて、写真を撮ってという作業を全部お一人でされているんですね。今回、その人形も持ってこられていて、実物を見ることができました。背丈20cm前後で、思っていたよりも小さく作ってありました。この人形の表情がとにかくすごい。言葉では言い表せません。長谷川さんが言ってました。ラフを描いたら、そのまま絵の具で描いた方がずっと楽やのんにね、って。ほんとそう思います。でも、この人形に命を吹き込むところから制作が始まるのがペク・ヒナ流なんです。

 説明会後の懇親会でも通訳の方を介していろいろお話を伺うこともでき、いっしょに写真を撮ったり、サインをいただいたりして帰って来ました。みなさんもぜひペク・ヒナさんの独特の世界を味わってみてください。

おおきな木 杉山三四郎