いいことあるよ、朝のウォーキング

 私ごとで誠に恐縮なんですが、半年ほど前に喉と胸のあたりに違和感を感じて、「ひょっとして癌かも!」とドキドキしながら近所の耳鼻咽喉科に診てもらったら、どうやら胃液が逆流して食道を痛めているのでは、とのこと。逆流性食道炎というやつです。でも、薬を飲んでもなかなか治らないので、またまた不安になって、今度は内科で診てもらうことに。で、そこでアドバイスされたことが、軽い運動のススメ。そして、脂っこい食事とアルコールと炭酸飲料をやめること。でも、これは無理だろうから、ま、控えめにしてください、と。

 そこで、9月になってから始めたのが朝のウォーキング。今まだ続いているので、まもなく4か月ぐらいになります。コースは長良川沿いに4コース。その日の気分で決めます。背筋をピンと伸ばし、速度は散歩と競歩の中間ぐらい。時間は30分〜1時間。歩数は4000〜7000歩ぐらいになります。始めて2か月経ったころから体に変化が現れました。まず体重が3kg減って10年ぐらい前の体重になりました。あと3kg痩せると20代のころにもどりますが、その後変化はありません。そして、気がついたら喉と胸の違和感がほとんど消えていました。

 そんなわけで、健康のためにと始めたウォーキングですが、他にもいいことがたくさんありました。インスタ映えの金華山や伊吹山などの景色が毎日違うこと。清流長良川の水の音に心が癒されること。土手や河原に咲く野の花や実を見つけたり、鳥もいろいろいます。今の時期には、モズ、ジョウビタキ、ホオジロなどが薮を飛び交い、カルガモやマガモが川面を漂って、のどかです。こんな景色の中を歩いていると、いろいろと物思いにもふけります。仕事のアイデアが浮かんだり、ライブのセットリストを考えたり、歌詞を頭につめこんだりと、ま、その程度のことですけどね。

 また、歩いているといろんな人に出会います。毎朝、ただぼーっと川を見つめて座っている人。タバコを吸いに来たと思われるおじさん三人組。犬の散歩をする人(これが一番多いかも)。犬種では圧倒的に柴わんこで、あの情けない目に癒されます。そして、猫に散歩をさせてる近所のおばちゃんも。通学を急ぐ高校生の銀チャリ軍団の合間を縫って河川敷に降りると、僕の自転車が10台も20台も買えそうな高級車で滑走するライダーたち。僕と同じようなウォーキングの人やランナーもたくさんいて、中にはいつも会う人もいます。

 そして、今はもういなくなってしまいましたが、11月ごろまでは、長い竿を振り回している釣り人が何人かいました。落ち鮎漁です。ウォーキングの足を止めて眺めていると、結構釣れてるんです。餌も付けずに何本かの鉤をつけた仕掛けで鮎を引っ掛けて釣る「ガリ釣り」という釣り方ですが、見てると一投ごとに1〜2匹かかっている人がいて、ある日、釣り終わった見知らぬ釣り人に、「よく釣れますねえ」と声をかけたら、なんと1時間半の間に70匹ぐらい釣れたとのこと。「よかったらあげるよ」と言われて、「えっ、ほんとですか。じゃあ2〜3匹ください」と言ったら、「全部持ってってちょ」と70匹もの鮎をいただいてしまいました。毎朝、釣れすぎて困っとるんだそうな。うらやましい!

 というわけで、10月のこのある日、天然鮎70匹をかかえて朝のウォーキングから帰って来るという偉業も達成したのであります。で、70匹もの天然鮎はどうなったのかって? どうぞご心配なく。ちゃんと誰かのお腹の中に入りましたよ。ほんと、岐阜っていいとこだ!

おおきな木 杉山三四郎