絵本ってどんな風に読んだらいいの?

 おおきな木を始めて24年目となりました。今でこそ自分を「読み聞かせの達人」とか言ってるんですが、店を始めたころは、どんな風に読んだらいいのかまだまだよく分かっていませんでした。というより、絵本の読み方については専門家の方々のご意見もいろいろで、迷いがあったんでしょうね。とくに、「感情を込めないで、淡々と読むべし」というご意見にはずっと引っかかってました。サラリーマン時代、CD付き絵本の制作をしていた時期がありましたが、プロではない子どもたちを相手に録音演出をすることもあり、豊かな感情表現をどう引き出すか苦心していました。無表情なセリフを録っていては商品になりませんからね。読み聞かせでも感情が込もらない言葉はNGなんじゃないかと。

 「感情を込めないで」とおっしゃる根拠は、こんなところにあるかと思います。オーバーな感情表現は聴いている子どもたちの想像の妨げになる。あるいは、あくまでも主役は絵本であって、読み手が目立ってはいけない。こんなところでしょうか。中には、読み手は顔を隠した方がいい、という方もおられました。

 でも、今の仕事になって頻繁に読み聞かせをするようになると、その迷いはだんだんなくなってきました。絵本を聞いてくれる子どもたちは、まず、読んでくれる人の顔を見ます。赤ちゃんはとくにそうです。絵本の絵よりも読んでくれる人の顔の方に関心が行ったりしますが、これは絵本に関心がないのではなく、当たり前の現象なんです。言葉を発しているのはその人なんですから。だから読み手の表情は大切です。赤ちゃん絵本は、擬音語・擬態語が多く使われていたりしますが、これは声に出してこそ生きてくる言葉です。体が感じたそのままが声や顔の表情となって表れるのが自然です。

 僕は、絵本を歌う「絵本ライブ」を20年以上続けてきましたが、歌ったら楽しいだろうなあと思える絵本って少なからずあるんですね。言葉自体がリズミカルだったり、自然と体が動いたり。そんな絵本を歌にしていたら子どもたちが結構喜んでくれるようになって、「うん、これでいいんだ」という自信につながっていきました。今ではこのレパートリーが4枚のCDになっていますが、学校や保育の現場などでも使っていただけるようになって嬉しい限りです。どんどん真似してください。

 さて、ではストーリーの絵本はどうでしょうか。これもやっぱり読み手の表情は大切です。登場する人物や動物たちのセリフには、どれもいろんな気持ちが奥に隠れていて、その気持ちを素直に表現したいものです。オーバーな身ぶり手ぶりは必要ありませんが、自然に湧き出てくる感情というのがあるはずです。

 と、ここまで書きましたが、あまり難しく考えないでくださいね。頭で考えるのではなく、まずは実践。自分流で構いません。上手に読もうなんて思わなくていいです。僕自身は、絵本はあくまでも子どもたちとのコミュニケーションツールだと思っていて、それが楽しくて我が子にも絵本を読んできたし、それを基準に絵本も選んできました。聴いてくれる子どもたちといっしょに楽しむ気持ちがあれば、まずはそれで十分です。

 数年前から、毎月定期的に読み聞かせに行っている保育園が二園ありますが、いつも僕が顔を出すだけで子どもたちの歓声が沸き起こり、大騒ぎ。ひょっとして、おじさん、アイドル? 絵本がなかったら、こんなふうに子どもたちに愛されることはなかったと思うので、本当に絵本があってよかったな、と思っています。

おおきな木 杉山三四郎